AI で 1 冊の本を生成する
ネット上で『Binary Hacks Rebooted』の中国語版が出ているのを偶然見かけました。この本は少し前に日本でかなり話題になっていたので、その熱気が台湾にまで届いたこと自体は私もそれほど意外には思いません。中には個人的に興味を引かれる章がいくつかあって、ふと思いついたのです——AI に原書の目次を参考にさせて、似たような内容を生成させられないか?と。
というわけで、AI に『Binary Hacks Rebooted』の目次を参考にさせ、似たような本の生成を試みました。コンセプト自体はそれほど難しくなく、プロセスもかなりスピーディーでした。
実験結果:https://github.com/tigercosmos/ai-gen-book-exp
免責事項:本プロジェクトでは、AI に『Binary Hacks Rebooted』の原著の内容を一切参照させていません。万が一、内容が原著と似通っている部分があったとしても、それは AI の知識ベースと原著の内容が偶然重なった結果であり、純粋な偶然です。
(セビリアのスペイン広場)
¶ AI による本の生成フロー
¶ 目次を作る
新しいディレクトリを作り、『Binary Hacks Rebooted』の目次を outline.txt にコピーします。
¶ コンテンツ生成を始める
Claude Code を開き、Opus 4.7 を選択し、xhigh effort を使います(Codex や他の AI API を使ってもかまいません)。以下のプロンプトを使用します:
outline.txtに基づいて 1 冊の本を書き上げてください。本は Markdown で記述し、台湾正體中文(繁体字中国語・台湾)を言語として使います。まず標準化されたフォーマットを定義し、その後複数の sub-agent を並行して使い、各章を生成してください。大章 1 つにつき 1 ディレクトリ、小章 1 つにつき 1 Markdown とします。まずは第 1 章から第 3 章までを扱ってください。
最初のステップはあまり時間がかからず、10 分ほどで 3 章分すべての小章が生成されました。
¶ コンテンツをチェックする
各小章は AI が独立して生成しているため、一貫性と正確性を担保する必要があります。そこで AI にチェックを依頼します:
第 1 章から第 3 章までの全コンテンツをチェックし、一貫性があり、内容が正確かどうかを確認してください。誤りがあれば修正し、得られた経験を
review.mdに記録してください。
調整後にはより滑らかな内容が得られ、さらに review.md も手に入ります。これ以降、AI にはこの経験を参照させて自己修正させていきます。このステップも 10 分ほどで終わりました。
¶ 反復する
最初の 3 章を生成し終えたら、テンプレートのスタイルを変える必要はないか、章ごとの表現・一貫性・ディテールの扱いなどが自分の期待に合っているかをチェックする必要があります。各観点でさらに磨きをかける必要があるかもしれませんし、AI にもっと多くのプロンプトを与える必要があるかもしれません。
セットアップさえ整えば、あとは AI に任せて反復しながら本 1 冊分を生成し続けさせられます。前段の各ステップはすべて git の履歴に残してあるので、興味のある方は覗いてみてください。
¶ さらなる最適化
1 冊の本にはコード、概念図、練習問題などが含まれており、それぞれを AI に追加でチェックさせる必要があります。例えばコードの部分については、AI が本の内容どおりに実行を試みる skill を追加で書く必要があり、動かなければコードを修正しに戻る、出力も実際に生成して初めて正しいものになる、という具合です。概念図や練習問題、そしてあらゆる細部も、それぞれ専用の skill が必要になるかもしれません。
¶ 生成結果
ぜひご自身でプロジェクトを覗いて、結果を見てみてください。原著を読んだことがある方は、ぜひ比較もしてみてください。
私自身は原著を読んでいませんが、「知識を学ぶ」という観点だけで言えば、生成された本でもおおよそ十分でしょう。実のところこれは、私が毎日 ChatGPT で AI とおしゃべりしながら新しい技術を学んでいるのとほぼ同じ感覚です。例えば今日 ELF とは何かを学びたいとなれば、私も ChatGPT に教材のような内容を直接生成させて、そこから AI とのやり取りで細部を強化していきます。AI に本を生成させるというのは、媒体が「1 冊の本」に変わっただけのことです。
生成結果は使えるレベルではあるものの、結局はありきたりな内容にとどまります。ですので、本を本当の意味で良書にしたいなら、手間ひまをかける以外に道はありません。かつてベストセラーを書いた経験のある著者として、私は心血を注いで 1 冊の本を書くということがどういうものかをよく知っています。1 冊の本にはあまりにも多くのディテールと工夫が詰まっており、AI に適当に生成させたものは小学生の作文のようなものです。
¶ まとめ
このプロジェクトはあくまで娯楽目的なので、本のコンテンツを真剣に反復・最適化することはしていません。それでも全体として、AI で 1 冊の本を生成することは完全に実現可能だと感じています。たいして時間もかかりませんし、自己学習用としてはまったく問題ありません。
ただ、振り返ってみると、AI はあくまでテキストエディタのような 1 つのツールに過ぎません。普通の内容であれば AI でいくらでも気軽に量産できますが、1 冊の本が長く愛され続ける理由は、結局のところ著者の創意工夫と知識の深さに依存しています。
誰もが AI で本を生成できる時代でも、独自性のある著者であれば AI を使って唯一無二の素晴らしい作品を生み出せるはずです。一方で、悪質な業者が AI で生成した粗悪なコンテンツを安易に市場に投入するようなことは望みません。それは出版業界に対する侮辱だからです。